プログラミング未経験だし、詳しいことはよく分からないけれど、IT業界に興味があるという女性は、少なからず存在すると思います。私もそんな一人でした。
IT業界に身を置き、複数の現場を渡り歩いて早10年目に差し掛かった筆者が、女性エンジニアの視点から辛口めにアドバイスさせていただきます。
IT業界に就職や転職するなら大手を選ぶべし!
私はプログラミング未経験でIT業界に足を踏み入れました。
大学は文系でしたし、就活にあまり時間を割けない状況でもあったので、最初から大手は狙っておりませんでした。
その結果、社員数100人弱の地方のIT企業へ新卒入社しました。
今思うのは、
ということです。
ITゼネコンにひそむ闇
日本のIT業界は、建築業界のゼネコンと同じようにピラミット構造となっています。
ピラミッドの頂点に大手SIerが存在し、その下に下請け、さらにその下に孫請けといった具合で、多重の下請け構造となっている場合が大半です。
例えば、下記のような関係の4社があったとします。
大手SIer – A社(下請け) – B社(孫請け) – C社(ひ孫請け)
人手が足りなくなった大手SIerは、月100万の単金(1人のエンジニアを業務に専従させた場合に発生する単位時間あたりの使用料金のこと)で適当な人材がいないか、A社に新規要員の募集をかけます。
するとA社は30万中抜きし、70万でB社に要員がいないか募集をかけます。
B社もさらに30万中抜きし、40万でC社に要員がいないか募集をかけます。
C社の社員で、今月いっぱいで他の現場での契約が終了となるプログラマー赤井さんは、A社の社員であり大手SIerの現場のチームリーダーである緑川さんと面談を行うことになりました。
赤井さんはスキル的にも問題なかったので、来月からA社の社員として派遣契約で大手SIerに常駐することが決まりました。
IT業界(SIer)では、自分の会社名を名乗れないことは、ごく当たり前。
A社の社員と同じ業務をしているにも関わらず、零細企業のC社の給料は低いです。
なぜなら、A社社員は中抜きがなく単金100万円なのに比べ、C社社員は中抜きが発生している分、単金が40万円まで下がっているからです。
当然、社員の手に渡る給料はもっと低いです。
また、同じフロア内でも、大手SIerの社員はプロパー、A社の社員はBP(ビジネスパートナー)と区別され、BPはBP専用の狭く劣悪な環境に押し込められて、プロパーの指図に従って下流工程の作業をすることになります。
入社した会社によって、力関係や給料や福利厚生の差は歴然です。
ピラミッド構造の下に行けば行くほど、いわゆるIT土方として働かなければならない未来が待っています。
IT業界はピラミット構造。下層に行けばいくほど、給料が安く劣悪な環境のブラック企業が多い。
大手企業は福利厚生も手厚い
大手SIer何社かに常駐していたことがありますが、自社との福利厚生の手厚さの違いを目の当たりにするばかりでした。
いくつか例を挙げていきます。
- 通常の有給休暇とは別に、家族が病気になったときの休暇がある
→私は自分の休暇すら取りづらかったです。 - 有給休暇をきちんと消化するよう促されている
→私は有休を消化出来ず、たくさん残したまま辞めました。 - GWや夏季休暇が1週間以上設定されている
→自社の夏季休暇は2日+土日でした。 - 資格の受験料を会社から出してもらえる
→情報系の資格以外にもTOEICなども会社で受けられたようでした。
他社と比べて分かりましたが、福利厚生は非常に大切です。
大手企業は教育体制もしっかりしている
大手SIerは新人教育プログラムも充実しています。
私の会社は3ヶ月間の新人研修のみでOJTなどが無かったため、新人プロパーさんが先輩からマンツーマンで指導してもらえる様子が羨ましかったです。
さらに、新入社員は半年残業してはいけないという会社もありました。
私の会社では新人研修中は残業代がつかないにも関わらず、遅くまで半強制で残らなければならなかったので、実にホワイトだなと感じました。
給料の格差
言わずもがな、大手SIerは給料もボーナスも高いです。
たくさんのボーナスをもらって、毎年一週間くらいの休暇を取って海外旅行にさくっと出かけてしまうプロパーさんが羨ましかったです。
中小企業勤務の私の場合、ボーナスなんて雀の涙、一週間もの休暇なんて客先に迷惑をかけることになるのでとてもじゃないけれど取れないといった状況でした。
比べれば比べるほど、格差を感じて惨めになってくるばかりでした。
女性エンジニアがスキルを身につければ出産後も働けるというのは半分嘘!
プログラミングのスキルを身につけておけば、出産育児を経ても復帰しやすいなどという話を真に受けてはいけません。
なぜなら、復帰自体は出来たとしても、育児と両立しやすい環境がまだまだ整っていないからです。
IT業界ってこんなところ
- 残業が当たり前。ただでさえ、定時では上がりにくい。
- 圧倒的男社会。女性は2~3割。
- 特定派遣の契約を結ぶ際には、下限の稼働時間が決められていることが多い(ex.月160H以上など)。
- 納期は絶対。納期前は特に忙しくなる。
- 明らかに納期に間に合わない量の仕事でも、どうにかして間に合わせなければならない。
自社勤務ならまだしも、客先常駐の場合はお客様に迷惑がかかることとなります。
迷惑以前に、契約していた下限の稼働時間に達することが出来ないと、契約を切られてしまう可能性があります。
子どもが熱を出して何日も休まなくてはならなくなった時には、近くに面倒を見てくれる祖父母でもいない限り厳しいでしょう。
また、大手SIerの育休明けのプロパーさんは、時短勤務で15時頃上がっていましたが、私の会社には時短勤務の制度はありませんでした。
大手SIerでは産休育休を経て復帰する女性社員を何人も見てきましたが、私の会社ではほとんどの女性社員が結婚や出産を理由に退職していきました。
結婚後も働けるか
自身の経験では、結婚後も独身時代と変わらず働くことが出来ました。
逆に言えば、結婚したからといって家庭に関して配慮してもらえるようなことは特にありませんでした。
ただ、夕飯くらいは自炊して夫婦で食べたいという理想と現実とのギャップに悩まされました。
残業を終えて満員電車に揺られて帰宅した後に、自炊する気力はありませんでした。
夫も同業で帰りは遅いので、各自お弁当を買って帰ったり、帰宅途中にラーメンを食べて帰ったり、新婚ホヤホヤの温かい家庭からは程遠い生活を送っていました。
仕事よりも家庭を優先したい女性は、寿退社がベストだと思います。
出産後も働けるか
散々悩み続けてきましたが、出産後も正社員で働き続けることは厳しいと判断しました。
夫は同業で多忙、お互いの両親は飛行機や新幹線の距離で近くに頼れる親戚もいないため、どうしたって仕事と育児を両立する見通しが立ちませんでした。
とはいえ、子どもがいながら仕事を頑張っているママさん社員も何人か見てきました。
しかしそれには、周りの協力が不可欠でしょう。
家庭を犠牲にして仕事を優先しなければならない場面も、少なからず出てくるはずです。
女性エンジニアが在宅で育児と仕事を両立するのは甘くない!
結局私は、正社員を辞めて在宅フリーランスとなる道を選びました。
在宅というとどこか楽そうなイメージがあるかもしれませんが、何でも一人でやらなければいけないので、正社員以上に大変な面が多いです。
子どもが産まれ、生後数ヶ月の頃にちょっとした仕事の依頼があり、引き受けることにしました。
それほど日数がかからずに仕上げられるだろうと見積もっていたのですが、予想に反して大変で、それでも出来る限り指定された期日までに仕上げたく、一日10時間以上パソコンに向かって頑張りました。
しかし赤ちゃんの世話もしなければなりません。授乳は3時間おき、それ以外にも泣き出すことも多々あります。
どうしても手を離せなくて泣いている我が子をしばらく放置してしまったのですが、ものすごく罪悪感に駆られてしまいました。
心と時間に余裕が無かったことも相まって、在宅フリーランスでやっていく自信を一気に失ってしまいました。
会社員だと何かあっても会社内でフォローしてもらえますが、フリーランスだと自分の代わりはいません。常に責任が伴います。
プレッシャーに耐えられる強さやスキルが必要です。
とはいえ、何かと融通がききやすいので、上手くやれれば十分育児との両立も可能です。
高いスキルを持っている方であれば特に、フリーランスの道はおすすめ出来ます。
まとめ:IT業界、働き方次第では女性でも長く働ける
これまでIT業界から姿を消してゆく女性エンジニアをたくさん見てきました。
実態を知らずにIT業界に足を踏み入れて後悔する女性が増えて欲しくないので、今回の記事を書くに至りました。
その一方で、長年IT業界に身をおき続ける女性エンジニアも、もちろんいます。
働き方次第では、在宅で自分のペースで高収入を得ることも可能です。
そんな女性エンジニアが増えていけばいいなと思っています。